提供: 有限会社 工房 知の匠
文責: 技術顧問 大場 充
更新: 2025年8月17日
インターネットの普及により、最近では、ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)が急拡大し、そのサービスの利用者数は指数関数的に増加しています。そのSNS利用者数の増加は、政治の分野においても、特に大衆を巻き込んだ選挙などの局面では、社会的な影響が、無視できないものになりつつあります。
2020年の米国大統領選挙においては、民主党候補を攻撃する手段として、敵対する候補を有利にするため、ロシアの勢力が米国のSNSを活用し、当該民主党候補に対するネガティブ・キャンペーン情報を流布したとされています。結果として、当初、有利に選挙戦を戦っていたと言われた民主党候補は、接戦の上、総得票数では上回っていたものの、獲得選挙人数では、僅差で敗北しました。
さらに、2021年頃から、人工知能分野の研究で、生成AI技術の研究が著しく発展し、対話的な情報の生成、映像情報の生成、音声情報の生成などの分野で、現実的な利用も可能な水準の技術に成長しています。この生成AI技術を利用すると、実際に存在する人物の仮想の映像や発言を、他人が意図的に作り出すことも可能になっています。現実に、そのような映像は、投資詐欺などの犯罪において利用され、犯罪被害者を加速度的に増加させています。
SNSでは、インターネットを利用し、個人と個人が、ネットワーク上で直接的に情報を交換することができるため、詐欺などの犯罪に利用されるだけでなく、一般の人々が直接、参加する選挙のなどの政治的な状況でも、意図的に世論を作り出し、選挙結果に影響を与える目的でも、利用されるようになりつつあります。特に、世論の醸成という面では、意図的であるかどうかに関係なく、事実ではない情報も、社会に拡散するための手段として利用されるようになっています。
SNSの問題も、生成AIの問題も、20世紀までの社会には存在していなかった。デジタル技術が、社会的に利用可能になった反面、その利用に関する規範が、社会全体には確立されていないため、従来のコミュニケーション手段であれば、起こることのなかった問題が、表面化する例が生じています。似たような問題は、コンピュータの利用が普及し、さらに一般的になるであろう、これからの21世紀の社会では、しばしば起こる問題になると考えられます。
そのような意味で、人間と人間が言葉を使ってコミュニケーションをする場面において、どのような規範を守るべきかについて、人類共通の倫理や社会規則を考えておくことが、社会的に緊急の課題であると考えます。
ここでの話の成り立ちは、以下の通りです。
第1章 ホモ・サピエンスからホモ・デウスへ
ホモ・デウスとは(2025年8月12日掲載)
第2章 人類発展の歴史
狩猟採集から農耕社会へ
(2025年8月12日掲載)
王権神授説から社会契約論、そして民主主義
(2025年8月12日掲載)
第3章 社会的合意の形成
言葉と社会 〜 合意の形成
(2025年8月12日更新)
認識と合意形成 〜 デカルトからフッサール
(2025年8月13日掲載)
第4章 自然言語と人工知能
言語の発展と、機械処理
(2025年8月13日更新)
機械学習と意味論の解析
(2025年8月13日掲載)
第5章 ホモ・デウスと倫理
機械学習系を活用した社会的合意形成の可能性
(2025年8月15日更新)
ホモ・デウス社会における合意形成の倫理
(2025年8月15日掲載)